「コムギ博士の1分豆知識」Vol.17ではチャイニーズ・スプリングの話をご紹介。全国で料理教室・パン教室を展開するホームメイドクッキング公式サイト。

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Vol.17 チャイニーズ・スプリングの話

今回はチャイニーズ・スプリングの話です

世界の標準品種の故郷で小麦研究の歴史を思う

小麦にはたくさんの品種がありますが、その中にチャイニーズ・スプリングと呼ばれる品種があります。「中国春小麦」という意味で、中国の四川省で栽培されていた春播き性のパン小麦で、近代的な改良品種が導入される以前からその地域で栽培されていた在来品種です。特に生産性や品質が良いということはないので、一般的には全く知られていませんが、小麦研究の世界ではもっとも有名な材料であり、世界の標準品種となっています。2014年にパン小麦の全DNA配列が解読されましたが、解読された品種はこのチャイニーズ・スプリングでした。この品種が標準品種となったのは、この品種を育てていた際、細胞中の染色体の数が半分しかない半数体と呼ばれる個体が自然に生じ、そこから様々な染色体数をもつ実験材料が得られたことが大きな理由です。それらの実験材料は、小麦研究の発展に大いに役に立ちましたが、研究者の中には、もっと実用的な品種を調べるべきだという人も数多くいて、今後、実用品種の全DNA配列の解析も進むと考えられます。

私は昨年夏、中国青海省に調査に行きましたが、その隣の四川省も少し探索しました。四川省はチャイニーズ・スプリングの故郷であり、現地で出会えることを期待しましたが、高地帯しか行かなかったためか、出会うことはできませんでした。しかし、調査中に、チベット族の方が自家用に栽培している小さな麦畑で、在来品種と思われる小麦を見ることができました。今では実験材料として世界中の研究室で育てられているチャイニーズ・スプリングも、もともとはこんな感じでこの辺りの農家が栽培していた在来品種なのだろうなあ、と小麦研究の歴史に思いを馳せたひとときでした。

チャイニーズ・スプリングの穂(右)と中国で在来品種の小麦を栽培していたチベット族の方々(左)

筆者:笹沼恒男
2016.1