おばあちゃんと思い出パン
前橋市 田村友紀さん
「ただいまぁ。おばあちゃん、お腹すいたぁ。」これが、小学生だった私の帰宅挨拶でした。そして「ほれほれ。」と言っておばあちゃんが出してくれたのは、白あんぱん。
おばあちゃんは若い頃、和菓子とパンを売っているお店に住み込みで働いていたので、味は本格的。私はパンでもお菓子でも、白餡が大好き。これは、おばあちゃんの味が原点になっているからよね。
そして10年が経ち高校生になった私は、病気で思うように食事が摂れなくなってしまいました。そんな時、おばあちゃんのあんぱんが大活躍しました。他の物は喉を通らなくても、おばあちゃんのあんぱんは美味しく食べられました。私の命を繋いでくれたのも、おばあちゃんのパンでしたね。
月日は経ち、私は大人になり、おばあちゃんが96歳になった今年、おばあちゃんは入院しました。職場のお昼休みを利用して、おばあちゃんの病室へ通いました。もう声を出す力さえなくなってしまったおばあちゃんの傍で、私が慌しくランチの手作りスティックパンを食べていると「じーっ」と見つめるおばあちゃん。「食べる?」と聴くと「うん。」と頷きます。そこで、牛乳にスティックパンを浸して食べさせました。おばあちゃんとの病室での大切なひと時となりました。
おばあちゃんは、9月に天国へ旅立ちました。振り返ると、私の成長とともに、おばちゃんとそして手作りパンの思い出が浮かんできます。これからは、おばあちゃんの味を大切にしながら私の味を磨いて行こうと思います。
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